「こんな暮らしがしたい」を大切に。豊かな時間を味わう日々

【坂本由美さん 伸男さん】
<ご紹介するのはこんな方>
坂本伸男さん(70代)
由美さん(70代)
南房総市三芳地区在住
家族構成 夫婦2人住まい
以前の居住地 神奈川県横浜市
移住スタイル 定住
のどかな田園風景が広がる、三芳地区の山下という地域。こちらに、横浜市から移住してきた坂本さん夫妻のお宅があります。広いお庭のなかにグリーンの外壁が映える、2階建てのお家です。
「田舎暮らしがしたい」とたどり着いたこの土地で、ガーデニングや畑など、豊かな自然環境だからこそできる生活を満喫しています。
実際の暮らしや、住環境についてお話を伺いました。
「庭の恵みをいただく」を叶える、開放的な空間の家

【坂本さん宅。外観】
広々としたお庭には季節の花が咲き、周りの木々が心地よい木陰をつくっています。
玄関側の軒下には、ぶどうのグリーンカーテンが育ち、たわわに実って美味しそう。

【玄関。見事なぶどうのグリーンカーテン】
「ぶどうは8年以上育てています。窓からの直射日光を防いでくれるし、採れたての実を食べられるのでおすすめですよ」
玄関を入ると、すぐ目の前にリビングが広がっていました。家を建てるときに、廊下や仕切りをなるべく造らず、開放的な空間にすることが、お二人の希望だったそうです。

【リビングと窓の外のウッドデッキ。庭の小屋は伸男さんのDIY】
リビングには大きな窓があり、室内はとても明るく感じられます。窓からは庭の緑が見えて、その先にはウッドデッキが続きます。デッキの天井には毎年ツバメがやってくるそうで、今年は5羽の雛がかえりました。

【ダイニングとカウンターキッチン。ステンドグラスの照明は由美さん作】
室内は観葉植物や雑貨が並んだ、すてきな空間です。そしてさらに目を引くのは、涼しげな色彩のステンドグラス。
その照明は、なんと由美さんの手作りとのこと。移住後にステンドグラス教室に通うようになり、制作したものだそうです。
今も月1、2回のペースで君津まで習いに行っています。

【干柿入りヨーグルト。グラスに庭のバナナの葉を添えて】
なんだかカフェに来たような雰囲気のなか、由美さんがサッと、飲み物と干し柿入りのヨーグルトを運んできてくれました。グラスの下にはバナナの葉が添えてあります。
「田舎暮らしが叶ったら、こういうことをずっとしてみたかったんです。必要な分だけ庭から葉や果物を採ってきたり、ハーブティーを作ってみたり。今では当たり前のようにしていますが、いちばん贅沢なことだと思います」
この日は、レモングラスやブラックペパーミントで作ったハーブティー。さわやかな香りがグラスから広がりました。
マンション住まいの横浜から、自然豊かな南房総へ移住
この土地を購入したのは2004年のことです。当時まだ仕事をしていた伸男さんは、土地の手入れをするために、週末だけこちらに来て、草刈りなどをしていました。
実はこの土地には平屋の物件が付いていて、横浜から行き来していた頃は、その家に寝泊まりして作業することができたそうです。

【土地購入時に付いていた平屋の家】
その後、2009年に今住んでいるお家を建て、お二人が移住できたのは2010年のことでした。
「元の家はまだ使えるし、壊さずに活用することにしました。季節外れの物をしまったり、来客が多ければここで寝泊まりしてもらったり。屋根にはソーラーパネルを設置しています」
横浜にいた頃はマンション生活だったという坂本さん夫妻。「退職後はどうしようか」と考えるなかで、「田舎暮らしがしたい」と不動産情報を調べるようになりました。
舞鶴出身の由美さんは、通いやすい静岡あたりの土地物件を探しましたが、価格が高く断念。そこで横浜から2時間以内で通える、南房総エリアを中心に希望の場所を探すことにしました。
「物件探しは週末に、半年間かけて回りました。はじめから新築にするとは考えていなかったので、家付きの土地や、土地だけのところ、別荘地などいろいろ見てきました。
ただ何軒も見たからなのか、だんだんよく分からなくなってしまって。
『移住したらどんな暮らしがしたいのか』と改めて原点に立ち返ることにしました。
ぼくたちは『自然のなかで、ゆとりある生活がしたい』と思ったんです」と伸男さんは話します。
そんななか不動産屋さんに紹介されたのがこの土地でした。
実はここは一度見学して断っていたという場所。
「初めに見たときは曇り空で、どんよりした印象でした。でも晴天時に再度来てみると、高台にあるこの土地は景色がひらけて、本当に心地が良くて驚きました。『ああ、いいな』と二人で決めました」
移住してからの生活はがらりと変わったという坂本さん夫妻。
「マンションにいた頃は、朝起きてすぐやることといえばゴミ出しくらいでしたが、ここではすぐ庭に出て野菜の成長を確認したり、メダカに餌をあげたりと、やることがたくさんあります。時間の流れが全く違いますね」と伸男さん。

【ひらけた高台の土地にある坂本さん宅】
広いお庭にはガーデニングエリアと、畑スペースがあり、今はオクラやナス、トマト、バジルなど夏野菜が育っています。甘夏やレモン、枇杷や金柑、山椒などさまざまな木があり、今年はあんずがよく実ったのでジャムを作りました。
近所に小さな畑も借りていますが、4年前までは田んぼも借りて米作りもしていました。
近所の人が「もう田んぼはやめるから使うか」と声をかけてくれて、7年間ほど米作りをすることができました。
「はじめてお米を収穫したときは、本当においしくて感動しました。自分で作れるというのは最高ですね。米作りや畑は地域のつながりがなければできないので、今振り返ると恵まれていましたね」と伸男さんは話します。
ゆとりある家からつながる、地域の「ゆるやかな交流」

【2階のくつろぎスペース。窓からの光で明るい室内】
坂本さん宅の2階も案内してもらうと、こちらも開放的で明るい空間です。書斎や寝室、そしてバルコニーに続く洋室があります。
洋室では主に由美さんがゆっくり過ごしたり、ヨガをしたりするスペース。ソファーベッドがあるので客間にもなります。
2階は明るく、風も抜けるため、お風呂場や洗面所は2階にしました。

【2階の天井は吹き抜け。梁からつるした「竹のぶら下がり健康器」】
木のぬくもりを感じる家にしたかったお二人は、自分たちで間取りなどのレイアウトを描き、工務店さんと相談しながら、希望の家を建てました。

【イギリスの地形をかたどった時計と、壁のニッチ】
海外に関係する仕事をしていたという伸男さんは、職場仲間からのいただきものや、外国のおみやげなどをいろいろな場所に飾っています。

【世界各国の指ぬきコレクション】
「海外に派遣されて仕事をするときは、やっぱり現地の人とうまくやらないと会社がまわらないし、安心して住むこともできませんよね。
なのでここに移住してきたときも『地域の人たちとのつながりは大事にしよう』とやってきました」
そんな伸男さんは「南房総国際交流協会」の活動にも関わるようになりました。今も姉妹都市であるアメリカ・ファーンデイル市の人たちとの交流が続いているそうです。
また館山市のスポーツ課がひらいたヨット教室がきっかけで、今年も元気に原岡海岸で仲間とヨットを楽しんでいます。
「ぼくらがこの土地を選んだのは、大きなスーパーがあるとか便利だからではなく、のどかな自然が残っているからなんです。
買い物や病院は車で15分ほどの距離だし、近くに道の駅『鄙(ひな)の里』もある。
東京や横浜に比べれば娯楽施設は少ないけれど、南総文化ホールでいろいろな催し物もあるし、市が開催する教室やイベントも結構あります。海や山もあるし、上手く活用すれば、充実して過ごせると思いますよ」
由美さんは「地域づくり協議会」の活動に参加し、毎月花壇の手入れなどをしています。
「既にあるコミュニティに関わってみると、近所のつながりや交流が持てます。地域のお祭りや文化を知ることができるのでおすすめですよ」
インタビューを終えて

【庭のステンドグラスの風車。由美さん作】
緑豊かな坂本さんのお宅から車道に出ると、黄金色の田んぼが広がり、輝いて見えました。早いところではもう稲刈りの季節です。
市街地から少し離れた自然のなかで、豊かに暮らすお二人。
南房総は広く、まだまだ知らないことだらけです。そして三芳から世界へと続くお話を伺ったからなのか、帰り道の景色は、いつもよりも壮大に感じられました。
(※本記事は、2026年8月に取材・撮影を行った際の情報をもとにしています)









