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南房総へ移住し「房州うちわ職人」に!千倉に工房をオープン

【横坂哲也氏】

<ご紹介するのはこんな方>

横坂哲也さん(50代)
南房総市千倉町在住
房州うちわ職人
家族構成 夫婦2人住まい
以前の居住地 茨城県
移住スタイル 定住

千倉町にある房州うちわの店舗「うちわ工房 よこ」を開店した横坂哲也さん。横浜市出身で、南房総市へ移住する前は、北海道や茨城県で長年競走馬の世話をする仕事をしてきました。
移住後は心機一転、房州うちわ作りに魅せられ、職人認定を受けます。
横坂さんにとって千倉町はどんなところなのでしょうか。
今の住まいに決めた理由や実際の暮らし、うちわ職人の仕事についてお話をうかがいました。

旅行で来ていた南房総に50歳で移住

20代から競走馬の世話をする仕事をしてきた横坂さん。職場の環境や今後の体力などを考え、長年勤めた会社を思い切って退職し、千葉県への移住を決意します。

南房総へは度々旅行に来ていて「こんなところに住んでみたいな」と感じていました。住まいは木更津あたりから探し始めましたがなかなか見つからず、だんだんと南下し南房総市までやってきます。不動産会社に物件紹介を予約して、4軒ほど見学することになりました。

実際に訪れてみると「横坂さんに合うような物件が新しく売りに出たから見てみますか」と言われ、不動産サイトにまだ公開していない物件を紹介してくれたそうです。南房総市で初めて見学した物件が、現在お住まいのこのお宅でした。その後予定していた4軒も見てまわりましたが、「圧倒的にここがいい!」と感じたそうです。もう1軒、別の不動産会社でほぼ同価格の面白い物件がありましたが、横坂さんは今の家に決めました。その理由は何だったのでしょうか。

まずは「海に近い」ということ。そして「銀行や郵便局、スーパーまで歩いて行ける距離」であることが決め手でした。

もう1軒は山側にあり、目の前には田んぼが広がる静かな環境です。物件も手を加えずに住むことができそうでしたが、横坂さんは「20年先のこと」を想像しました。50歳からの移住のため「将来車の運転に不安を感じたり、足腰が弱くなったりしても、生活に必要な施設が歩ける範囲にあればなんとかなる」と考え、現在の家を選ぶことにしたのです。

房州うちわ職人の道へ

2020年に南房総市に移住した横坂さんは、千葉県を代表する伝統的工芸品「房州うちわ」に魅せられます。

「自分も作れるようになりたい!」と翌年には「房州うちわ振興協議会」の入門講座を受講。実際に山に入り竹を採るところから始め、うちわを仕上げるまでを学んでいきました。2023年にうちわ職人の認定を受け、2024年の2月「白間津花のパーキング」内に店舗を兼ねた「うちわ工房 よこ」をオープンすることになりました。

自宅と工房は同じ千倉町にあり、車で15分ほど。工房を始めて間もないため、店を閉めた後は夕方からホームセンターのスタッフとしても働いています。

「まだまだこれからだけど、ひとつひとつ自分で選んできたからやりがいがある」と語る横坂さん。
ご自宅には房州うちわの作業部屋もあり、「うちわ作りの体験のために、大人だけでなく子どもも喜ぶような、うちわに貼る和紙や布をいろいろ集めているんです」と張り切っています。

作業部屋の壁には、30代の頃に世話をしていた競走馬の写真が。「レースで優勝した時の写真です」と懐かしそうに目を細めていました。

房州うちわの作業部屋にて

【房州うちわの作業部屋にて】

窓からの景色や明るさを活かした、遊び心のある家

桜や紫陽花など季節の木や花に囲まれた横坂さん宅の玄関は、優しい雰囲気に包まれています。玄関扉の上の壁には大きな窓が付いているため、中に入ってもとても明るく、開放的に感じられました。
リビングも同様で「これでも窓の一部のカーテンは閉めています。全ての窓を開けると明るすぎて眩しいくらいなんです」とのこと。

リビング天井のシーリングファン。小窓や明かりの位置など遊び心のある造り

【リビング天井のシーリングファン。小窓や明かりの位置など遊び心のある造り】

実はこの家の以前の持ち主は、現在お隣に住んでいます。持ち家は2軒並びで、隣の家には以前の持ち主の親御さん夫婦が、そしてこの家にはその娘さん(以前の持ち主)がご家族で長年住んでいました。お子さんもいて、こだわって建てたお家だそうです。

改めて見るとカウンターカフェやバーができそうな造り。はじめはそんな計画もあり設計したそうですが、実現には至りませんでした。やがて子どもたちも巣立ち、今は娘さん夫婦がお隣の家に住んでいます。

この家でも十分工房が開けそうですが、横坂さんは「自宅だと甘えてしまうので」と話します。

「工房に行くと、うちわ作りだけに集中できる。私生活と仕事場は分かれていた方が、私の場合は気持ちの切り替えができますね」

リビングでお話をうかがった後「この家を選んだ最大の理由」があると2階を案内してもらいました。寝室の窓を開けベランダへ出ると、涼しい風がスーッと通り抜けていきます。景色を見渡せて、その目線の先には青い空と海が広がっていました。反対側には山の緑もあり、横坂さんはこのベランダからの景色を見て「ここに住みたい!」と、強く感じたそうです。

海が見える部屋の窓

【海が見える部屋の窓】

景色が一望できる自慢の窓は、実は元々壁で、小さな窓が付いているだけでした。「この景色を部屋から眺めたい」と大工さんに相談して、後付けしてもらうことに。台風の心配もあるため、強度を保てるよう開閉しないタイプの窓をはめこみました。
海へは歩いて8分ほどで、自宅は30メートルくらい高台にあるため、津波の心配もいりません。

実際に住んでみて困ったことやアドバイスはありますか

とてもすてきなお宅ですが、住んでみて気づくこともあると思います。困ったことはあったのでしょうか。

「建ててから20年以上経っているので、床や壁紙の傷みがあり張り替えが必要でした。床の張り替え時には断熱材を入れましたが、壁の張り替え時と屋根裏には入れなかったため、夏は暑くて、冬は寒いんです」

以前の持ち主の話では、数年前までは夏の間も窓からの風で冷房を使わずに過ごせていたそうです。でも、今は暑さも年々厳しさを増していて、冷房を取り付けることになりました。
今振り返ると「さらにお金がかかっても、壁の張り替え時や屋根裏に、しっかり断熱材を入れておけばよかった」と話します。

もう一つは「屋根に太陽光パネルを設置しよう」と考えていた横坂さんでしたが、家の設計図を以前の持ち主が紛失してしまったため、設置することが叶わなかったことです。「設計図なし」という条件のため、予算内の金額で購入できたと納得していますが「後々リフォームなど考えている人は、設計図有無の確認を」とアドバイスいただきました。

「物件は粘り強く探せば巡り合えると思います。『どんな場所や環境で、どんな生活をしたいか』をイメージして、きちんと伝えることが大切です」

できる所は自分の手で直し、庭も活用

大部分の壁紙の張り替えは業者にお願いしましたが、手が届く範囲の壁や天井は横坂さん自身で白く塗り直しました。「ムラのあるところもありますが、天井は特に大変でしたね」と笑いながら話します。

横坂さんが白く塗った壁。玄関上部の窓から光が差し込む

【横坂さんが白く塗った壁。玄関上部の窓から光が差し込む】

お話をうかがっている時にいただいたハブ茶の実は、横坂さんが庭で採ったものだそうです。

リビングの窓を開けるとウッドデッキがあり、そのまま庭へ出られるようになっています。ウッドデッキでは、うちわの材料になる竹を干すこともあるんだとか。この日は卵の殻を干していました。乾燥したら粉状にして、肥料に使うとのことです。

「今は工房の仕事もあり、庭の畑までなかなか手が回りませんが、アスパラガスなどが自生し収穫しています」

ウッドデッキと庭

【ウッドデッキと庭】

庭には柳の木も植えてありました。房州うちわは「柄詰め」という、柄尻の空洞に柳の枝を詰める工程があるため「工房をはじめた時に先輩職人から頂いた苗」を大事に育てています。

今の暮らしはいかがですか

「南房総に移住してから、ほとんど旅行に行かなくなりました。海も山もあるし、この土地に満足していて、どこか他に行きたいと思うことがなくなりましたね」

茨城に居た頃は社宅住まいだったため、今のご自宅はリラックスして過ごせるといいます。

「朝、目が覚めて窓を開けると自然の景色がパッと広がる。それだけで充実した気持ちになれるんです」

「2020年に南房総へ来ましたが、本当はもっと前から『移住したい』という気持ちが心の奥にあったのだと思います。ただその時の仕事や生活を優先して、自分の気持ちを後回しにしてきました。今は『やりたいことは何』『楽しいことはどれ』を指標にして、自分の人生を切りひらいています」

インタビューを終えて

50歳での移住とチャレンジの日々。そして千倉町の海と山を眺める穏やかな時間。
房州うちわの面の下部分を「窓」と呼びますが、横坂さんのお宅も窓を活かし、南房総の風景を満喫する暮らしぶりがうかがえました。
もちろん、追い風も吹いていますよ。ぜひ千倉の海と「うちわ工房 よこ」へ、爽やかな風を感じにいらしてくださいね!

【うちわ工房 よこ】
ホームページ
https://uchiwa-yoko.jp/
Instagram
https://www.instagram.com/yoko.uchiwa/

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