山あいの地で「手づくりの時間」を思いきり味わう

【長島さん宅。手芸作品に包まれる空間】
<ご紹介するのはこんな方>
長島竹次さん(70代)
和子さん(70代)
館山市神余地区在住
家族構成 夫婦2人住まい
以前の居住地 神奈川県横須賀市
移住スタイル 定住
定年を機に、横須賀市から館山市に移住してきた長島さん夫妻。
のどかな山あいの神余地区に、一軒家を新築して18年になります。
2階建ての家に、広いお庭があります。移住してからは、主に夫の竹次さんが庭で野菜や花を育て、妻の和子さんは室内でパッチワークキルトやつるし雛などの手芸作品を制作してきました。お互いに「手づくりの時間」を大切にしながら過ごす日々です。
こちらの土地にたどり着いた経緯や、実際の暮らしについてお話を伺いました。
山側の広い土地を求めて移住。庭仕事を楽しむ

【長島さん宅とお庭。百合が見頃】
横須賀に住んでいた頃から山登りが好きだったという竹次さんは、「定年したらすぐに田舎暮らしがしたい」と考えていました。
休みの日は富士山に行くことも多かったそうで、「移住するなら山側」と希望していましたが、雪などの冬の厳しさが山暮らしの難点でした。
南房総エリアは横須賀にいた頃から、年に1回くらいのペースで花摘みなどに来ていて、「この地域の山側なら、寒い時期も大丈夫かな」と感じたそうです。
ある日の新聞に、房総の土地の広告が掲載されていて、思いきって見学することにしました。
はじめに紹介された土地は竹岡エリア。自然のある良いところでしたが、崖を背負っていることが気になりました。
次に行ったのは和田地区の山あいにある土地です。日当たりも良く海も見えましたが、残念ながら水道が通っておらず、道路もせまかったため断念することにしました。
そして最後に案内された場所が、現在お住まいのこの土地です。
神余は自然の残る里山地域で、周りの家々の多くは傾斜地に建っていましたが、この土地は比較的平らな場所でした。上下水道も完備されていて、電気やガスの心配もいりません。
「庭に果樹を植えるのが夢だった」という竹次さんは、「この広さなら良し!」と即決しました。
横須賀にいた頃も、富士見町という山側エリアに住んでいたのですが、自宅の庭がせまく、植えられたのは柿の木一本だけだったと言います。
移住後は思いきり庭仕事に励むことができました。
現在は、ブルーベリーやプラム、柿やみかんなどの果樹が植えられ、畑にはネギやサツマイモ、トマト、ナス、きゅうりなどが育っています。
夏にはスイカやメロンも味わえるそうです。
茨城県出身で、実家が農家だったという竹次さんは、「昔は畑の仕事を手伝わなかったけれど、家族が農作業をする姿を見てきたから、今になって自分の手でやりたくなったのかもし

【竹次さんがDIYしたウッドデッキ】
家から庭につながるウッドデッキは、竹次さんのDIYです。
虫が入ってこないように、周囲を網で囲いました。
屋根付きのため、ふだんは物干し場としても活用されています。
棚にある水槽で飼っているのはメダカやエビ。成長を観察するのが楽しみなのだそうです。
ウッドデッキは、友人とお茶や食事をしたり、子どもや孫たちが帰ってきたときにバーベキューをしたりと、憩いの場になっています。
移住後にはじめたパッチワークキルト。彩りをつむぐ日々

【玄関。和子さんの手芸作品がお出迎え】
玄関から入ってまず目に留まるのは、パッチワークキルトやぬいぐるみなど、
見事な作品たち。
明るい室内がさらににぎやかに感じられました。
これらはすべて、和子さんが移住後に作りはじめた手芸作品です。

【和室。和子さんの作品がずらり。飾り棚は竹次さんのDIY】
「働いているときに友人がパッチワークをしていて、すごくいいな、私もやりたいなと思っていました。でも仕事が忙しくて、とてもやる時間がなく、定年後にやっとはじめることができました。移住してからは、朝から晩まで何時間もちくちくちくちくと…いつの間にかこんなに増えていましたね」と和子さんは笑いながら話します。

【パッチワークキルト、つるし雛、人形、ぬいぐるみが並ぶ】
飾り棚には、昔話や絵本から出てきたかのようなぬいぐるみや人形が並び、手づくりのぬくもりが心地良く感じられました。
一体一体、表情や身に付けている衣装もそれぞれに個性があり、眺めているだけで物語が始まっていくようです。
パッチワークキルトやつるし雛は、習いに行くところがなかったため、本や雑誌を見ながら独学で作りはじめたといいます。
手芸の生地には着物などの古布を活用し、図案を見ながら、布の配色を考えるのが楽しいとのこと。この和室が和子さんの作業場になっています。

【ステンドグラス風のパッチワークキルト】
「移住したばかりの頃は、『ずいぶんと山の中に来たものだな』と思いましたが、ここだからこそ集中して作ることができたのかもしれません。家にいることが多いのですが、隣近所と適度な距離感があることで気兼ねなく過ごせています」

【寝室。ベッドカバーなどの大作も和子さん作】
基本は手縫いのため、大きなサイズのパッチワークキルトを作るのは本当に大変です。
バッグなど、強度が必要なものにはミシンを使う箇所もありますが、そのほかは一針ずつ進めていきます。
手縫いならではの、ふっくらとした立体感がパッチワークキルトの魅力だからです。
「美容院に行くと、『肩が凝っていますね』とよく言われます。自分じゃ分からないけれど、つい同じ姿勢で、長時間作業をしているからなのでしょうね」
実は移住してからも、横須賀にある馴染みの美容院へ、数年前まで通い続けていたという和子さん。なかなか自分に合う美容院が見つからなかったそうです。
「浜金谷から船に乗って久里浜に出て、そこから電車で横須賀に通っていました。遠かったけれど、移住してから家にいることが増えたので、出先で友人宅に泊まったり、街を歩いたりすることも、良い気分転換になりました」
手づくりはさらなる境地へ
たくさんの手芸作品を作ってきた和子さんですが、今年の5月からまた新たなチャレンジがはじまりました。
それは、近くのコミュニティセンターで開かれているパンフラワー教室に通うようになったことです。

【人形やぬいぐるみと並ぶ、パンフラワーのあじさい】
パンフラワーの第1作目はあじさいでした。そして今は、カラーの花を制作中です。
パッチワークキルトとはまた違ったむずかしさがあるそうで、和子さんの静かなる挑戦はまだまだ続きます。
室内ではパンフラワーのお花が咲き、庭では季節のお花がぽんぽんと顔をだしています。
長島さんのお宅には、一年を通して彩り豊かな空間が広がっています。
インタビューを終えて
どこか懐かしさを感じる作品に見惚れながら、あたたかいひとときを、しみじみと過ごさせていただきました。
帰りがけ、竹次さんにまた庭を案内してもらうと、「特におすすめな時期は桜の季節」と教えてもらいました。
庭には桜の木や芝桜が植えてあるので、花が咲くと、道行く人たちが「きれいだね」と言いながら、ゆっくりながめて行くのだそうです。
来年の春にはきっと、和子さんの作品もさらに増えていることでしょう。
お花見にあわせて、またじっくり拝見できることを、筆者も楽しみにしています。
(※本記事は、2026年6月に取材・撮影を行った際の情報をもとにしています)









