Home > 南房総大好き人 > 南房総市在住 青田主税様 二拠点生活

海と畑、ふたつの夢を叶えた南房総・和田の家

【青田さんご夫妻】

<ご紹介するのはこんな方>

南房総市和田地区・神奈川県厚木市 二拠点生活
青田 主税さん(65歳)・真樹さん(62歳)
家族構成 夫婦2人

学生時代から40年以上、サーファーとして南房総に通い続けてきた青田さん。東京で生まれ、現在、神奈川県厚木市の自宅とは別に、南房総市和田町に家を建てました。なぜこの地を選び、どのように望む暮らしを形にしていったのでしょうか。お話を伺いました。

光と風を活かす家

【印象的な外観のお宅】

【印象的な外観のお宅】

青田さんのお宅は、太平洋の海原から500mほど離れた里山エリアにあります。

150坪の敷地には柿の木があり、たわわに成った実が目に美しく映ります。地面にはつるくびかぼちゃの葉が広がり、関心のある人なら、すぐにそれが自然農と知れるでしょう。窓からご夫妻が顔を出し「こちらからお入りください」と気さくに声をかけてくださいました。

玄関を入って右手に回ると、奥へと伸びる廊下の先に明るいリビングが広がります。南向きの大きな窓から差し込む光が、室内全体をやわらかい明るさで包み込みます。無垢材の床は足に心地よく、思わず歩き回りたくなるほどです。

「家は、日光と風をどう取り入れるかが大切だと思います」と、主税さん。

【自然の光と風を活かしたリビング】

【自然の光と風を活かしたリビング】

南と西に大きな窓を設えました。南の窓の外には藤を絡ませたウッドフレームのひさしがあります。このひさしには、ミストホースが這わせてあり、涼しげな霧が出る仕掛けに。ミストホースは、外壁のアクセントになっている木板の上も伝っており、洒落た木板のデザインは実用にも適っています。西の窓の外にはグリーンカーテンを備え、強い西日を調整しています。よく見るとグリーンカーテンの横棒は、なんと釣り竿。支柱は農業用パイプです。主税さんの手作りとのこと。目にやさしいリュウキュウアサガオの緑が風に揺れて気持ちも和みます。

【西日を調整する手作りのグリーンカーテン】

【西日を調整する手作りのグリーンカーテン】

なぜ、和田だったのか?

主税さんは東京都出身。高校では強豪の山岳部で主将を務める傍ら、当時流行したアメリカ西海岸の文化への憧れから、サーフィンに出会い、夢中になります。そこで、仲間10人と御宿(おんじゅく:千葉県)の漁師小屋を借り、サーフィンの拠点としました。この漁師小屋には、学生・サラリーマン時代を通して、33年間もの間、通うことになります。いくつかある畳の部屋は、襖を外すと宴会場のようになり、広い土間にはお風呂もありました。懐かしい場所です。漁師小屋とお別れしてからは、サーフィンの拠点は鴨川市内のリゾートマンションのワンルームに移りました。サーフィンは和田のポイントを回ることがほとんど。

今の家を建てるきっかけになったのは、妻の真樹さんの「地面がほしい」という思いでした。

「庭と畑がやりたかったんです。趣味はビーチコーミングなので、『海の近く』もマストな条件でした」と真樹さん。

ところで、なぜ和田だったのでしょうか?

「リアル南房総だから!」というのが主税さんの答えです。

「外房を南下していくと、嶺岡トンネル(嶺岡分水嶺)を抜けたところから、リアルに南房総の気候になると感じます。植生も海流も変わるし、水温も上がります。山で北西からの風が遮られているからではないでしょうか」と説明してくれました。

理想の土地を求めて

お二人で、内房エリアから鴨川あたりまで、7、8件の不動産屋さんと関わり、多くの物件を見て回りました。今の土地に出会ったのは2019年です。150坪の農地を農転して宅地にし、家を建てることにしました。

ところが2019年、令和元年房総半島台風が襲来します。家を建ててもらう予定だった大工さんは、台風で壊れた家屋の修理に大忙しとなりました。青田さんご夫妻は「自分たちは神奈川に家があるし、鴨川のマンションもある。家が壊れて困っている人が先だろう」ということで、快く待つことにします。その矢先の2020年には、新型コロナウイルスの影響で資材が入らなくなり、ウッドショックも起きました。その結果、家はすべて国産の材料で建てることに。ようやく家が建ったのは2024年のこと。

家を建てるまで、3、4年待ったことが、主税さんと真樹さんに、思いがけずよい影響をもたらしました。それは、近所付き合いを続けるうちに、地域とのつながりが深まったことです。野菜や魚をいただいたり、伊勢海老漁の手伝いをしたり。最近では仲間と田んぼで米作りに励むようにもなりました。

手作りの音と畑のリズム

どのような家にしたかったのか、お聞きしてみました。

「イメージとしては穂高岳山荘のような平屋で、大きいワンルームのような作りですね。土地を農転した関係で、家を少し大きくする必要があって、少し長めの家になり、家の中に井戸も作りました。シンプルな構造で、メンテナンスが楽になるように考えました」とのこと。

主税さんは、勤務先を早期退職してからDIYのために職業訓練学校に通い、合わせて内装設計や施工、環境工学も学んで家を建てました。その熱意は家の至るところに現れています。リビングのテーブルも、IKEAのものをアレンジして、木材を加え、好みのサイズに仕上げています。

リビングに飾られているのは、西アフリカの弦楽器「ンゴニ」。真樹さんが和田浦海岸で拾ったブイを使い、館山在住のンゴニの先生が制作したものだそうです。真樹さんのンゴニに合わせ、主税さんがハンドパンを叩いて合奏してくれました。一瞬で心が広々と解放されるような気持ちのよい音でした。

音と同じように、自然とも呼吸を合わせる暮らし。真樹さんの畑は自然農で、つるくびかぼちゃや、ひょうたんなどが自由にのびのびと育っています。家も畑も自然のリズムを取り込んで暮らしています。

その一方で、主税さんは、地元の青年会の他、農地に不向きな中山間(ちゅうさんかん)地域を守る活動にも参加し、自分たちが住む地域のために尽力しています。

主税さんに移住を希望する人に、ひとことアドバイスをお願いしたところ、このように答えてくれました。

「その土地を好きになることが一番。あとは視野を広く持って、自分が住むところをより良い場所にしていくという気持ちを持っていれば、移住や二拠点生活は、より豊かで充実したものになると思います」

【夫婦で合奏。音合わせ、一瞬の集中!】

【夫婦で合奏。音合わせ、一瞬の集中!】

【一枚板のカウンターの上にも自然からのいただきもの】

【一枚板のカウンターの上にも自然からのいただきもの】

【のびのびと育つ、つるくびかぼちゃ】

【のびのびと育つ、つるくびかぼちゃ】

インタビューを終えて

「家や土地を買うことは、暮らしをはじめること」という言葉が印象的でした。

南房総との長いつきあいを経て建てた家で、手作りの生活を楽しみながら地域の活動にも加わる青田さんご夫妻。二拠点生活、移住を希望する多くの人が憧れるライフスタイルを実現されていると思います。末永くこの土地で自らの暮らしを楽しみながら、活躍していただければ、と思いました。

(※本記事は、2025年10月に取材・撮影を行った際の情報をもとにしています)

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