館山の別荘へ通って30年。今は東京が別荘って感じに変化した

【ミュージシャン 深津純子さん】
<ご紹介するのはこんな方>
深津純子さん(30歳で二拠点生活スタート)
館山市・東京都中央区 二拠点生活
家族構成 夫婦2人住まい
深津さんと館山との出会いは、今から30年ほど前。ミュージシャンとして歌やフルートを演奏して活躍している深津さんが、ゆっくり落ち着いて作曲をしたり、練習したりできる場所が、館山にあった別荘でした。月に1~2回館山を訪れるという二拠点生活をスタートさせてから、30年が経過。東京と館山の暮らしと変化について、深津純子さんに話をうかがいました。
東京の暑さを逃れるための避暑地
深津さんがご主人とお付き合いをしていた20代のころ、東京があまりにも暑かったので「暑いからどっか行きたい」と漏らしたとき、「じゃあうちの別荘に行く?」って言われて、ご主人が所有していた別荘に訪れたのが、深津さんにとって初めての館山訪問でした。
深津さんの館山の印象は、落ち着く場所。だからこそ、曲作りや練習に打ち込めたので、月に1~2回館山へ通うような生活を27歳ごろから続けていました。その間「地元の人とは全く人と交流することはなかった」と言います。
その言葉に、現在の深津さんを知る人なら驚く人もいるかもしれません。コミュニティガーデン 「Leaf & Root(リーフアンドルート)」を運営している今、数々のイベントや交流の場を提供しているからです。
深津さんが館山の人たちと交流するきっかけになったのは、やはり音楽でした。
【ライブは都内が多いですが、ときどき館山で演奏することも】
「あるとき、千倉でジャズフェスがあるから遊びにきませんか?って誘われて、連れて行ってもらったんです。たまたま出演者が知っている人で、何かやってよって言われて。飛び入りで参加したら、そこからバーッとつながりが広がっていって」
それは、二拠点生活をはじめて10年経ったころでした。
コロナで逆転した暮らし
以前は東京と館山での生活がほぼ半々だった深津さん。コロナ禍をきっかけに二拠点生活の比重が変わり、館山がメインの生活になりました。どんな日常を過ごしているのでしょうか?
【夕方、自由に散策している鶏たちを鶏小屋に誘導してエサをあげる深津さん】
「烏骨鶏や猫にエサをあげてから、ガーデンの草取りとか畑作業とか。夏はまずガーデニングとか汚れる作業をやってから泳いで、汗を流して海の潮で身体を清めます。冬は少し遅めに起きて、エサをあげてからガーデニングして、午前中は動物とか植物の世話とかやって。そのあとずっと仕事して」
【烏骨鶏と猫】
烏骨鶏を5羽飼っている深津さんですが、烏骨鶏が縁で仲良くなった友だちもいるそうです。海があって、自然があって、素潜りができて。コロナ禍からはシュノーケリングを始めたという深津さん。自宅から歩いて数分で海岸に出られて、遠くまで出なくても近場で魚が見られて、思いっきり泳げる海のことを「友だち」と言っていました。
「コロナになってから前よりも海に入るようになって。お風呂みたいな感じ。夏は作業するとほんとに汗びっしょりになるから、何回も行く。ここは潜ると色々魚が見られるから、やっぱりそれがいいよね」
コロナ禍以降は、ほとんど館山で過ごすことが多くて、「東京が別荘って感じ」と話していました。
館山の魅力、東京の魅力
【庭で採れたハーブやエディブルフラワーでお菓子作り】
「東京と一番違うのは、落ち着く。食べ物が違う。野菜は知り合いの農家さんとかから買うから、安心だしおいしいし。今は音楽やるときにしか東京に行かない。あと歯医者とか。東京だと電話したら一週間以内に診てもらえるけど、こっちだと予約するのに3週間とか待たされて忘れちゃうから、東京に行った方が早いやと思って。館山の魅力はやっぱり海とか、自然。シュノーケルもコロナのころにはじめてけっこう毎日潜ってて、そしたらああこんな子がいる、こんな子もいるっていろいろな魚に出会えています」
歯医者については病院によると思うので、館山の歯医者イコール遅いとは言えませんが、歯医者に限らずそういった面もあるという一例になります。
【畑にあるキャッサバ(イモ)の様子をチェックする深津さん】
「おどろいたことは、公共交通が少ないこと」私は車があるからいいですけど、なんかあったときとか足がない。それくらいかな。二拠点の魅力はいいとこどりで、ふだんはこっちで自然とともにの生活で安全なものを食べられるし、お野菜も手に入るし、自分で育てたものを食べられるから安心だし、魚もおいしい。東京は逆に、医療とかチョイスがある。人がいっぱいいるから、エンターテイメントとかいろんなチョイスがある。でもそれはたまにでいいよね」
【庭で採れたハチミツと蜜蝋】
世界中で行われている、お金のやり取りをしない仕組み
コミュニティガーデン「リーフアンドルート」にはログハウスが建ち、ハーブガーデンが整備されています。ハーブは自然との調和を保ち、人に癒やしを与え、お茶にして飲むこともできるので、人が癒され、学びと活力を得られる活動の場にはぴったりなのだとか。
【庭で採れたハーブを使ったハーブティー】
10年前からWWOOF(うーふ)を取り入れている深津さんのところには、海好きな人や音楽が好きな人などが滞在しながら、一緒に畑作業をしたり、海に入ったり、ご飯を食べたりして過ごしています。
WWOOFはお金のやりとりではなく、食事や宿泊場所と知識や経験などを交換する仕組みで、その利用者をウーファーと呼び、食事や宿泊場所を提供する側をホストといいます。WWOOFを利用して世界中を旅する若者たちがいて、深津さんはホストとしてガーデニングや畑作りなどに必要な知恵や力を借りています。
「こっちの都合と向こうの都合で滞在期間を決めて。目的がお金じゃないので、お給料とか考えなくていいから楽だし、その代わりウーファーにプラスになるように、海に行ったりご飯を食べたり、畑のことを教えたりして、基本一緒に作業をします。畑のことは何も分からない子が来るので、一からやり方を教える。若い子は体力があるから、教えればできる」
【ウーファーと食事を囲む深津さん】
このとき滞在していたのは、24歳のフランスの人が2人と、55歳の台湾の人が1人でしたが、多いときは同時に6人くらいか滞在していることもあるそうです。
インタビューを終えて
深津さんといえば、ハーブガーデンを開放していろいろな人が訪れるコミュニティづくりをしているというイメージがありましたが、二拠点生活を始めてから10年間は全く交流をしていなかったと聞いて驚きました。二拠点生活30年となると、拠点の比重や付き合いなど、どんどん変化していくのですね。いつ訪れても、庭から採れたおいしいハーブティーを淹れて迎えてくれるこの場所で、癒されて元気を取り戻す人も多いのではないでしょうか。たまたま、ご主人の別荘があった場所の館山に、見事に根を下ろしている深津さんの今後がどう変化していくのか、楽しみです。
コミュニティガーデン Leaf & Root
https://leaf-and-root.com/