たどり着いた「海辺の暮らし」釣りと枇杷を味わい楽しむ

【吉岡正子さん 孝さん】
<ご紹介するのはこんな方>
吉岡孝さん(70代)
正子さん(80代)
南房総市高崎地区在住
家族構成 夫婦2人住まい
以前の居住地 千葉県我孫子市
移住スタイル 定住
2010年に千葉県我孫子市から南房総市の高崎地区に移住した吉岡夫妻。
自宅からは東京湾に面した内房の海が見えて、開放的な景色が広がっています。
「釣りがしたい」という孝さんの希望でたどり着いた、この地域と平屋のお宅。
自宅から海までは道路をはさんで徒歩3分ほどの距離です。
こちらの物件に決めた理由や、海辺の暮らしについてお話を伺いました。
窓から見える海と富士山の景色が決め手。投げ釣りができる内房へ移住

【自宅の外観】
「移住先は南房総」とはじめから決めていたわけではなかったという吉岡夫妻。在職中から、なんとなく「退職したらどこかに移りたいな」と思っていたそうで、「一年かけて千葉県を外房から内房までぐるっと見てまわった」と話します。
釣り好きの孝さんの希望は、移住するならとにかく「海が近くにある」ことが条件で、九十九里からはじまり、鴨川や館山、富浦など房総半島をめぐってきました。
現在のお宅は内房の岩井海岸が近くにある地域です。この海や土地を選んだ理由はあったのでしょうか。
「移住先をさがしていた頃は、主に投げ釣りをしていました。外房の海は崖や岩場が多くて波も強く、サーファーには良いでしょうが、私にとってはこの内房の海が、投げ釣りにぴったりの場所だったんです」
もうひとつの理由は、孝さんが職場の保養所として、岩井海岸付近の民宿をよく利用していたことでした。
「夏に何回か来ていたので、この地域には馴染みがありました。いろいろ回ってきたけれど、最終的には『この海の近くがいい』と不動産屋さんに物件を紹介してもらうことにしたんです」
平屋のこのお宅は築10年も経っておらず、以前の持ち主の方がときどき使用されていたこともあり、家はきれいな状態で、テーブルなどの家具も揃っていました。
「海が近いから風や塩害など心配していたけれど、この家を見た時に『しっかりした頑丈な造りだな』と感じました。窓からは海と富士山が見えて最高の景色。迷わずここに決めました」
移住する2年ほど前にこの物件を購入し、週末は釣りをしに我孫子市からよく通っていたという孝さん。
念願の釣り生活を実現することができました。

【ダイヤモンド富士。自宅近くの海で(正子さん撮影)】
生活の環境に合わせて、新しいことにもチャレンジ
釣りは主に岩井海岸や小浦漁港で楽しんでいます。キスやメゴチなどを釣ってきて、魚をさばき料理をするのも自分で行います。
岩井海岸は遠浅の海で海水浴にも人気のスポット。民宿が多い地域です。
近所の民宿のご主人が釣り船も営業していたため、はじめは投げ釣りをしていた孝さんも、船釣りの楽しみを知りました。
こうして移住後の暮らしを楽しむなかで、新たな挑戦も始まります。
移住してから車の運転免許を取った孝さんは、木更津の生涯大学に通い園芸科を受講しました。
自宅に隣接する枇杷畑を活用することにしたのです。
「実はね、移住して1年くらいしたら、もう釣りに飽きてきちゃったんですよ」と笑って話す孝さん。
「はじめは自分が枇杷の木を管理したり、畑をしたりするとは思ってもみなかったけど、生活していくなかで変化することや、新たな学びもあるので何事も経験ですね。今は結果オーライだと思っています」
リビングの壁には絵画がいくつか飾られていました。育てた枇杷を上司に送ったところ、そのお礼としていただいた手描きの油絵なのだそうです。
「近所の民宿に一か月ほど泊まって、房総の景色を描いてくれる」とのことで、力作です。
退職し移住した後も、こうした温かい交流が続いているようです。
お礼の絵画の他にも、我孫子市にある古利根(ふるとね)沼の墨絵や、イタリアに行ったときの写真などが飾られていて、思い出話に花が咲きました。

【玄関。こちらの絵画も枇杷のお礼にいただいたもの】
夏の風物詩、海辺の花火を満喫。家族や友人が集う楽しみ
「夏はね、自宅から花火が見えるのよ」と写真を見せながら話す正子さん。

【海辺の花火大会。自宅近くから(正子さん撮影)】
岩井海岸で開催される花火大会です。この日はお隣さんの家に集まって飲み会をするのがお決まりとのこと。
海辺の花火を家からゆったりと楽しめる、最高のひとときです。
同級生や友人が吉岡宅に泊まりに来ることもあるそうで、
「道の駅『富楽里(ふらり)とみやま』が近くにあるから、高速バスでここに来る人が多いですね。スーパーも車で5分ほどの距離だから、送り迎えのときに買い物を済ませて、泊まる人が多いときは近くの民宿やホテルを紹介しています」
移住前の我孫子市の家には、今も娘さん家族が住んでいます。
息子さん家族は茨城に住んでいて、お盆や正月などはこの家に集まることもあり、にぎやかになります。
「孫も釣りが好きなんだ」と話すお二人。とても嬉しそうです。
家も畑もなるべくコンパクトに。無理せず暮らす

【軒下。道路の向こうに海が見える】
家のまわりのちょっとしたスペースも、お花を育てたり、小さな畑にしたりとうまく活用しています。
「定年退職してから移住してきたので、広い土地を持っていたら草刈りや剪定などの管理がとても大変です。二人暮らしだし、家や畑はなるべくコンパクトにして、無理のない範囲で生活するようにしています」

【枇杷畑】
枇杷の木は、袋掛けの時期がこれから始まります。

【芝生だったところを畑に。ブロッコリーが育つ】
我孫子市にいた頃から作っていたというたくあんは、移住してからも正子さんが毎年漬けています。
庭の木を活用して大根を干しているとのこと。
お二人とも、工夫を楽しみながら暮らしている様子がうかがえました。

【金柑の木と正子さん】
インタビューを終えて
実は筆者も子どもの頃、夏休みによく連れてきてもらった海が岩井海岸でした。生まれ育ったのは千葉市なので、この海に泳ぎに来て、民宿に泊まった思い出がよみがえります。
現在は南房総の里山エリアに住んでいるため、海辺ならではの暮らしや楽しみ方があるのだなとしみじみ感じました。
「朝は天気がいいと海がブルーで本当にきれい。『住めば都』を実感しています」と話す吉岡夫妻。
移住後も人とのご縁を大切に、環境に合わせてしなやかに生きる姿勢が印象的でした。
豊かな海は今日もきっと、そんなお二人を見守っていることでしょう。
(※本記事は、2026年3月に取材・撮影を行った際の情報をもとにしています)






